Discography
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cover album "Plays Evergreen Folk Songs"




ボッサリカ first album “Sunrise”

3月4日配布のタワーレコードフリーペーパーTOWERより↓↓↓(ダウンロードしてご覧下さい)


ボッサリカ first album “Sunrise”
2011年3月8日(サンバの日?!) タワーレコードより先行発売(他店は4/6発売)
PVBR−001 全15トラック 2300円(税込み) Private Beach Records 第一弾
distributed by TOWER RECORDS JAPAN INC. (Distribution & Rights Division)


ライブで培われた珠玉のポップナンバーに加え、BONNIE PINK、サーカス、福山雅治の「夏うた」カバーを収録。さらにはスケート高橋大輔選手が自身のパフォーマンスに選曲し話題となった新進気鋭の
DJ OKAWARI、そしてハウスDJの大御所GTSのTURBOがリミックスで参加。


リーダー白鷹秀樹によるセルフライナーノーツいよいよ公開。↓↓長いよ〜(読み応え十分)


Sunrise全曲解説 by 白鷹秀樹

before daylight
 Sunriseの前に音だけで表現した「夜明け前」を入れたかった。と同時にピアノを弾く自分とアコーディオンを弾く自分の共演を思いついた。Liveのときはプレーヤーとセッションをすることでその人が、どんなノリを持ってるかが見えてくるように、自分自身がどのように弾くのかセッションすることでわかるような気がする。だからクリックを鳴らさず自分の呼吸で絵を描くように弾いてみた。
 最初はどうしてもリズムや(鍵盤の)タッチを気にして頭で弾いてる感が抜けなかったが、指が精神とシンクロするまで何度も弾き直し続ける。そうすると不思議な気分になる落としどころが見つかる。アルファ波が出まくる感覚と言うか、ぼーっとしてるのだけど、一つのことにこれ以上ないほど意識を集中している感覚。時間は忘れているというより止まってる。
 その感覚をアコーディオンに持ち替えたときまで覚えておいて、同じテンション同じ呼吸で演奏すると、気持ちがいいくらい同じ音の流れにのっかる。演奏が楽しいと思えた曲のひとつだ。シンセの音色はベーシックができた後に、キャンバスに色を置くように音を置いていった。
 Track Down(以下TD)は自分でやっている。空気感をすごく大切にしたかったので、TDでの空間系のプラグインの処理やアコーディオンのレコーディングの時も録り音のコントロールにも気を使った。

Sunrise
 before daylightから間髪入れずにこの曲に入りたかったので、マスタリングの時、山崎さん(ビクター青山スタジオFLARE マスタリングエンジニア)にもそのように処理してもらった。この曲は壮大な世界観をピアノとブラジルの楽器、例えばスルドとかパンデイロとかそういったパーカッションで表現しようと思った。ライブでは僕はアコーディオンを弾いていることが多いが、この曲はピアノがトラックの中で最も重要な役割を持っている。
 bossaricaはその名前にあるようにボサノヴァをひとつのスタイルとしてるけど、それは数あるブラジリアン・ミュージックの中でもボッサという響きを代名詞として入れただけと言ってもいい。ボサノバ・ミュージシャンではない。むしろボッサと入れたことで、自由にブラジル音楽を崩してJ-Popに料理できると思って付けたのだ。
 つまり何が言いたいかというと、このSunriseのビートは "新しい" サンバであり、ボッサなのだ。
 一緒にレコーディングしたことのあるブラジル人のギタリストVioがこの曲を聞いて「アフリカから渡ってきたブラジルのビートなんだ」と言ってたが、知っててそうしたわけじゃない。今まで聞いてきた音楽や演奏し続けた音楽で培われた引き出しによって、僕の頭の中で鳴るSunriseのビートがたまたまそうだっただけ。ハウスビートの軽快な4つ打ちのノリに近づけた上で、僕の好きなボサノバのリムショットパターンを加えたり、イメージに最初からあったアフリカのリズムをパンデイロを使って入れていくことで、表現したかった壮大感が出てきた。
 歌詞に関しては、Okikaの裏ブログが元ネタになっていて、気に入ったブログの内容を僕が歌詞に編集している。アドレスを公開していない方のOkikaブログは詩的でおもしろい言葉使いや表現が多いので、ほとんど全部のブログをプリントアウト。50枚くらいになった紙をじっくり読んで、さらに思いついた言葉の追加やいい部分にアンダーラインを引いたりして膨らませていった。
 Sunriseに関しては、元々僕が歌詞を書いていたが、どこかしっくりこなくて、彼女の詩に目を通していると『よせてはかえし 時を超えて流れ着いたこの波はあなたの涙』というフレーズに言葉では言えない衝撃を受けて、ぜひこの詩をSunriseでOkikaに歌ってほしいと思った。その内容はSunrise(日の出)にふさわしく、少し切ないものだったからだ。
 大切な友達との突然の別れから立ち直り、私は今をがんばって生きていくよ、という自分自身に送る詩だった。
 その詩はこの曲のメロディにとてもマッチしたし、詩と曲がひとつになったと自分でも実感している。

Neon Sign
 今回のアルバムで唯一PVを撮影した曲。意外に子供ウケがいいのが個人的にもうれしい。ブラジル音楽は好きだが、ブラジル音楽の専門バンドではないし、ワールド・ミュージックの棚に並ぶつもりもない。bossaricaを始動してまず考えたことだ。
 キューバやメキシコでラテン音楽を学んだことで、ラテン音楽の引き出しが多少あるとは言え、困ったことに日本じゃ理解されにくい音楽ジャンルのひとつでもある。以前Shakaboneのデビューアルバムリリースの際「背表紙にラテンて言葉は入れない方がいいよ」と言われたことがあった。「ラテンと入れると一般リスナーは敷居が高くなり、ラテンファンからはこれはラテンじゃないとディスられ、いいことないから(笑)」 と 冗談まじりに言ってたが、その人自身が大のラテンファンでラテンプレイヤーだったので説得力があった。
 僕の音楽を聴いてラテンなのかラテンぽいだけか、ただのポップスか、決めるのは曲を聞いたリスナーでいいと思う。Neon Signはそれを当てつけたような曲にした。bossaricaという、なんとなくブラジル音楽を匂わせた名前のユニットで、押し曲がNeon Signだ。どこがボッサやねん!!とツッコミみが聞こえてきそうだ。というより、もう何人かにはツッコまれた。
 でも、それでいいと思ってる。これもブラジル音楽の進化系なんだと主張する。そもそもボサノバという言葉そのものが、サンバを変化させて新しいものに挑戦したプレイヤーたちの音楽を "ニュー・ウェーヴ"=Bossa Nova と呼んだものだ。そういう意味で「ボサノヴァとは新しいものを取り込んで常に変化していくべきブラジル発の音楽なんだ」と僕は解釈する。
 しかし日本ではワールドミュージックの表現に大して手厳しいところがある。今でこそ崩しに崩されJ-Popとしての落としどころを見いだしたレゲエだって最初はそういう風潮があった。
 僕の場合"ホンモノ"は現地の方にまかせて、僕は民族音楽をベースにしながら、いかに聞きやすく人に届けるかに重きを置いたサウンド・プロデューサーを目指しているし、それに挑戦した曲のひとつがNeon Signである。
 ブラジル音楽の代表的ジャンルである「ボッサ」とエレクトロの意味を込めた「リカ」、その名前にふさわしい1曲を作りたいと思ってできた曲、Neon Sign。これがbossaricaだ。
 歌詞はSunrise同様、Okikaの詩を編集して歌詞にしている。『ガムを噛んだ』というフレーズ。すごく印象が強かったフレーズのひとつ。今でこそ、この言葉にメロディが乗って頭で再生されるけど、当時はただの詩。
 『ガムを噛んだ』・・・こっけいな言葉だと思ったけど、頭から離れなかった。バカバカしくて面白かった。くたくたのガムって・・・がむしゃらなガムって・・・笑った。
 だけどメロディと同じで頭から離れない言葉はいいに決まってる!という持論がある。でもこの詩を選んだのはそれだけじゃない、『恋を前から後ろから斜めから左45度から』というフレーズがある。"恋愛を多角度から冷静にみようと思ったの" という自分自身への恋に対する冷静なアドバイス。これは僕自身すごく共感するものがあった。たぶん同じように共感したリスナーもいると思う。
 "恋は盲目" なんて言うけど、ネガティブな "盲目" という言葉を使わず、ポジティブに表現してユニークだなぁと思った。

Squall
 ほとんどの曲はメロディとコード感が先に頭の中で膨らんで、そこからアレンジも頭の中でできていく。それを楽譜に起こすわけだが、僕の楽譜はほとんど絵のようなもので、人が見てもわからない記号や抽象画で書きなぐっている。CDをリリースした後、人がライブや車の中で聞いているイメージが出来るまでは、パソコンの前に座ることはなく、紙と鉛筆だけでできるだけ具体的に曲の設計図を書く。音色もぐわ〜っ!! とか ピュピュ〜ンとか効果音的なものまで言葉とそれをどこにどういう風に入れたいかまで絵と音符で書く。
 紙に書き終わった後は、やっとProToolsを立ち上げて、それをただ音にしていくだけ。音色を選ぶのに迷う時間もない。紙に書いた設計図通りに脇見も触れず再現していく。そのほうが、すごく効率が良くて気分に振り回されない曲になるからだ。音色も何万とあるのでひとつひとつ試しながら選んでいたらきりがない。この曲もメロディができた後、すぐにギターのアルペジオが浮かんだ。2番の平歌は1番とメロディが違う。これは1番のサビが終わった後になぜか頭の中で別のものがでてきたから。それにそのまま言葉をのせてみた。語るようなリズムの不規則なそのメロディに言葉が乗ったときにすごく気持ちがよかった。
 軽快で早朝の出勤通学時に聞きたくなるような音作りを意識したかった。アレンジをし終えては、朝8時頃の電車に乗っていろんなヘッドフォンに切り替えながらチェックを繰り返し、眠気が消えない朝に耳障りな音色を避け、テンポ感も朝に優しいレベルにする。テンションが上がってくる夜とは違うものだなぁと、聞いていて実感した。だからこの曲はできるだけ朝方に制作。夜は気分もハイで、聞いてると物足りなく感じてきて、いろいろエッジを出したくなってくるからだ。控えめなくらいがちょうどいい。
 歌詞はOkikaと合作。理由のひとつは、この曲はメロディが出来た時から具体的なストーリーというか世界観があって、それを生かしたかったから。僕もOkikaも地方から東京に出てきて、そこで自分の音楽を探し続けながら葛藤や挫折もあったわけだけど、ちょっとした通り雨=不運だけで自分の気持ちが折れてしまうことって多々あると思う。
 あんなに「これこそが私だ」と確信してたことだって、少しつまずくとあっという間にそんな気がしなくなってくることも。でも雨は永遠に降り続けるわけじゃないし、雨は上がるものなんだよ、というメッセージ。
 それにひとりで閉じこもって考え込んでしまうより友達と支え合ったり痛みを共有することで、また自分のモチベーションをあげられたりする。そういうものなんだと歌ったのがSquall。
 TDは、立ち会いではなくエンジニアにデータを渡して1週間ほどで返ってきた。間奏で一瞬音が消えるところがあるけど、僕はそういう風にはしてなくて、TDをお願いしたエンジニアのがっきー(石垣良隆)から曲が上がってきたときに、『ちょっとブレイクいれといたよー』と当たり前のように返ってきた(笑)。
 勝手にアレンジをいじるエンジニアも珍しいかもしれないが、彼とはつきあいが長くて作る音には信頼を置いている。彼も僕の好みをすごくわかってくれていて、信頼があるからこそ堂々といじって返す。実はSunriseのアウトロのフェードアウトも彼によるものだ。僕のはもう少し淡白に終わっていた気がする。もちろん両方ともすごくよかったので『ありがとう』と言って生かしでお願いした。東京に来てそういう素晴らしい仲間に恵まれたことにすごく感謝しているし、この曲はそういうメッセージなのだ。

大好きでもさよなら
 唯一bossaricaの中で王道なボサノバか・・・と思わせて、中間あたりから少しずつ変化して、最後にかけて思い切り裏切っている。やっぱり普通のボサノバでは嫌だ!という僕のこだわりがある。日本人ボサノバミュージシャンは小野リサさんはじめたくさん知っているし、彼らを尊敬しているからこそ、僕は僕のブラジル音楽を表現したいと思う。それでできたトラック。
 この曲メロディとハーモニーにはものすごくこだわった。メロディに対していくつもコードを当てはめてみた。その中で切なさがしみじみと伝わるメロディと和声の相性を見つけた。
 それからこの曲のアコーディオンアレンジは、僕のアコーディオンの先生である佐々木憲さんによるものだ。彼にアレンジをお願いしたところ、すごくいいフレージングだったので、それをレクチャーしてもらいレコーディングに挑んだ。自分には無い引き出しを持っていて新鮮で面白い。音楽はたくさんの引き出しで作っていくほうが、視野がせまくならず面白くなる。僕はサウンドのトータルを舵取りできればいいと思っているから。
 歌詞はOkika。純粋なラブソングだが、どこか切なくて心に残る。冒頭の「キミと会う日の雨が好き」は僕が気に入ってるフレーズのひとつ。「愛しいけどさようなら、まだ大好きが消えない」でもさよならなんだね‥‥。そういうラブソング。僕はこういうちょっと切ない恋を歌った曲を作るのが好きだ。
 TDはサワディ(澤田悠介)だが、歌がしっかり聞こえるバランスを意識してくれたおかげで、言葉が聞き取りやすい曲に仕上がった。

Stray Cat
 僕がブラジル音楽にのめり込んだ最初のきっかけは、セルジオ・メンデス。マシュ・ケ・ナダを始めとする1960年代の名曲がここ最近、Black Eyed PeasのWill.i.amらの手によりHipHopを交えた新しいスタイルで蘇ったり、その少し前からはサンバヘギの首領カウリーニョス・ブラウンなどブラジルのいきのいいミュージシャン達もアルバムに参加している。そして"タイムレス" "モーニング・イン・リオ" "ボン・テンポ" と2006年からリリースが続いている3枚は僕の愛聴盤で、最近のセルジオ・メンデスというアーティストの見え方がすごくかっこイイ。
 それ以前はセルジオ・メンデスと言えば"Sergio Mendes & Brasil '66"で知られるようにオールディーズ、つまり昔の人というイメージが強かったし、年齢層高めのユーザーが多く、セルジオ・メンデスのファンだ、というとマニアックと言われるか、おじさんと言われそうなイメージがあった。だが、ここ数年クラブではよく耳にするし、大沢伸一さんもセレクトアルバムを出していたりと、クラブシーンを中心に若い年齢層とセルジオ・メンデスとの間に接点が見えてきた。
 Black Eyed Peasを知っていればセルジオ・メンデスを知っている。僕もそういったひとりかもしれない。もともと僕はキューバ音楽から南米音楽に入り、サルサ、メレンゲ、レゲトン、ラテンハウスなどに特化したクラブ仕様のトラックメーカーとして活動してきたが、箱バンで経験を積んできたプレイヤー上がりの僕は、DJというよりミュージシャンというバックボーン。セルジオ・メンデスの活動スタイルに共感を覚えるのは、ブラジル音楽をやっていく上でごく自然の成り行きだったかもしれない。
 彼を知るプロデューサーから聞いた話だが「彼も箱バンの出身、でも昔からミュージシャンというよりプロデューサー気質だった」という。2年前ライブをブルーノートで見たときも正直一流ピアニストには見えなかったが、サウンド・プロデュース能力はすごいと思ったし、ミュージシャンというよりやっぱりプロデューサーなんだという印象を強く受けた。それがむしろかっこよくてすごく憧れている。
 そしてセルジオ・メンデスに影響された自分が、日本語歌詞でそういうサウンドを追求してみたい、と思って作ったのがStray Cat。アコーディオンと歌だけでも成立する曲にしたかったので、伴奏の主体はアコーディオンだ。
 それを中心にドラム、ベース、ギターと生楽器で構成した。そのせいもあって生バンドでライブするのが楽しみな曲のひとつだ。唯一僕がセルジオメンデスとは、違うアプローチを意識しているのが、シンセフレーズ。セルジオ・メンデスならブラスやエレピ、たくさんの女性コーラスでカバーしている帯域を、エレクトリックなシンセのフレーズでアプローチしてbossaricaならではの新しいブラジル音楽進化系を追求した。

Re:
 リプライ。返信のことだが、実は歌詞的に「リセット」の意味も含んでいる。イントロのエレキギターのフレーズが2回同じものを繰り返してるのに、2回目は頭が一瞬リバースするというギミックでも表現した。それをメッセージとして組み込みたかった理由は、Okikaの詩に触発されて生まれた曲だからだ。
 曲先、詞先という言葉があるが、これは同時進行でできていった。言葉の足りないところは、伝えたいことをわかりやすく補った。メロディに合わせて作られた詩ではないので編集や歌詞としての言葉の追加は、自分で歌いながら作っていく。  CDを購入して歌詞カードを見ていただければすごく嬉しいが、サビと呼んでる "世界の終わりに、、"のワンブロックの最後にどんでん返しを演出したかったので詩の構成をかなり編集した。
 『私が困ってたらきっと君が助けてくれる きっと手を引いてくれる』 あぁなんて美しい歌詞だぁ・・・と思った最後に、『な・ん・て  都合がいいんだ』 だ。 自分勝手な妄想なんだね。自分を貶めている。そんな自分も今のふたりの関係もすべてをリセットしたいのだ。この世界観は僕にはない引き出しだ。これをサビの最後に絶対持ってきたかった。そして "な・ん・て" の後に少し間を置いたメロディにしたのもそういう演出を意識してのことだ。
 アレンジではこの曲はボサノバとロックの融合を試みた。敷居の高いイメージがあるブラジル音楽をエレキギターによってもっとラフなものにしたかったからだ。もともとロックは好きだけど、自分の作る楽曲に関してはレベルメーターを覗きながら『あのー、ギターがちょっと歪んでない?』と、歪んだギターは入れたくなかった。でもずっと抑えてきたその反動なのか、最近は何故か歪んだギターが好きになっている。
 ロックしたいのにラテンではそれが難しいとばかり思っていたが、それは引き出しが少なかったせいだと気づいた。アウトロは少し長めにしてガットギターとアコーディオンのセッションやOkikaのハミングを演出してみた。
 僕はこれからこういうサウンドを主に作っていきたいんだ!という1曲をここに表現した。やっぱりエレキギターのカッティングやオーバードライブしたパワフルなギタ−と軽快なブラジルビートの融合は斬新でかっこよく感じた。
 Bossa Nova(新しい感覚)だ。

好きだと言わせて
 セルジオ・メンデスが好きで良く聴いてる人は、ニヤッとするのではないだろうか。セルジオ・メンデスもバイレファンキやサンバヘギという北東部のバイーア州を中心に盛上がっているアフリカ回帰指向なビートをモチーフにしている曲がある。実際のバイレファンキのお膝元サルバトールのクラブなんかでは、ドラッグに暴力、歌詞やパフォーマンスの過激さもあって地元警察が介入するくらいデンジャラスで、スラム街のブラジリアンHipHopといったところだ。ダンススタイルはレゲエやレゲトンに通ずるものもある(一方でエアロビのように健康的なアシェのブームもあるが)。
 そんな前置きをしながらも、この曲に関してはあえてゆるい世界観を出したかったので、マスタリングの時も派手で攻撃的にならないように注意して聞いていた。
 マスタリングエンジニアの山崎さんが、前後の曲を意識しながら何パターンも処理して、みんなで聞き比べて一番かっこよく聞こえるものではなく一番くつろいで聞けるものを選んだ。前のめりになって聞く曲ではないからだ。ゆったり何かをしながらバックグラウンドに心地よく流れていてほしい曲。TD処理後の聞こえ方がすごくよかったので、マスタリングでがらっと変わってしまわないように気を配った。
 ギター間奏後のサンバのリズムセクションは、"ライヤ!ナナナ!"というかけ声とともに実際にライブではサンバエスコーラと共演したりと、ライブの演出も意識している。
 どの曲もそうだが、制作はProToolsでプログラミングからレコーディングまでやってしまっている。PCを使った便利なDAW(音楽制作ソフト)がたくさんあっても、長く付き合ってきたMPC(卓上サンプラー)や昔のハードシーケンサーで制作する人が今でもいるように、キューベースでもロジックでもなく、今までと同様ProToolsでMIDI入力もすべてやってしまう。長くつきあっているとMacやソフトが不機嫌なときとその後どう対処すればいいかもわかってくる。制作中に不具合やトラブルなど余計なことに気を取られたくないので、極力シンプルな制作行程を考えていくと、最初から最後(TD)までProTools。そこに至る。
 音源は主に編集して数百ギガバイトにも及ぶサンプルライブラリをStructure(ソフトサンプラー)に読ませて使用したり、Yamaha motif XS8をマスターキーボードも兼ねて使用。ドラムは1音1音作り込んだ。ドラムは生っぽくてもどこかクールでストイックに叩いてほしい。それを表現するためにはBFDが今のところ使いやすかった。

In my life
 これはまったくブラジル音楽から脱線した曲。アルバム全体を通してみたときに、"あ、J-Popじゃん!"と思ってくれるアルバムであってほしかった。最初にも述べたようにワールドの棚に並ぶつもりはない。一般リスナーが聞きやすいレベルで自己表現しないと意味がないと思っている。という理屈を抜きにしても僕は王道J-バラードが大好きだ。
 以前メキシコに行ったとき、町中はラテン音楽であふれてると思っていたが、偏見だった。普通のバラードはもちろん、日本で流行っている洋楽はメキシコでも流行っていた。ロックやR&Bもあったし、その土地のポップスも当たり前だけど存在する。血がそうさせるのか楽曲の中にラテンぽさが残るところは、僕が作るとなんでもそうなるのと似ている。だからちょっとうれしかった。肩の力が抜けたし、そうだよね、それでいいんだよねぇと自分にいい聞かせられた。だから日本で音楽をやっている僕らはJ-バラードが入ってて当たり前だろ!という感覚がある。
 この歌詞は合作。もともとイメージがあった。結婚パーティーで歌える曲が欲しかった。自分が欲しかったから自分のために作った感じ。だから披露宴会場で用意できそうなピアノと歌だけでも成立するようなアレンジにした。歌詞の内容も母に感謝し、自分も母のように優しい気持ちで子供を愛したいという想いを歌っている。母へ送る曲というのは結構あったりするので、最初は父にしようかと思ったが、Okikaの猛反対により母に(笑)。
 やっぱり娘は母へ気持ちを伝えたいのか。それはリスナーも同じなのか。僕なら娘に感謝されたい。いつか娘が父へ気持ちを伝える曲も作りたいと思う。
 この曲の歌をレコーディングする際、どうしても歌のリズムがスクエアになった。とくに平歌は言葉が淡々と詰まってるフレーズなだけに、グルーヴをコントロールしないと単調で面白くない歌になる。そこでクリックを2拍3連で入れてみた。拍頭で割り切れないクリックを聞きながら歌うことにOkikaは最初戸惑っていたが、すぐに感覚をつかんでくれて、彼女の歌にスイング感が出て心地よく流れるようなグルーヴに変化した。
 ピアノ伴奏主体で考えていた In my life に元々エレキギターは入ってなかったが、何か物足りなさを感じ、締め切りぎりぎりになって、ケン(橘井健一)にレコーディングをお願いした。何もリクエストしていないのに一気に南国な匂いを付けて "たぶんこうなるであろう" 僕の予測を裏切って振り切ってきた。それほど目立たないギターなのに一気に世界を変えてくれて、これには僕も驚いた。 In my life は南国の島の夕暮れの海辺で描いた曲で "スローライフ" がキーワードのひとつだったからぴったりのイメージに落ち着いた。

How deep is your love?
 "あなたの愛の深さは?" 自分に対してどれくらい本気なのかを知りたい。それは今私があなたに対して本気で好きになりそうで恐いから。本気で好きになったとき傷つきたくないからあなたの気持ちも気になってしかたがない。そういう意味が込められた歌詞。
 アルバムを通して生ベースは全部新戸くん(ベーシスト: 新戸崇史)にお願いしてるが、これは特に頑張ってもらった曲。以前にオリジナルラブのベーシスト小松秀行さんに僕の曲のレコーディングで参加していただいたことがあるが、新戸くんはその小松さんとなら一緒に寝てもいいというほどの惚れっぷり(笑)。彼のベースラインをしゃぶり尽くすように研究しているらしい。ならばこの曲は彼のベースが合うのではないだろうか、と元々打ち込んでいたシンセベースを全部ミュートして曲データを渡してお願いしてみた。確かに・・・。小松さんが好きなんだなぁ。かっこいいと思った。
 ノリを重視したこの曲は深く考えずにノッてほしい。DJやってる人はぜひかけてほしい。そんな曲。僕もこの曲だけバックボーカルに参加。


Mr.サマータイム
 カバーの3曲は自宅でアレンジ〜TDまでしている。TDの際、普通のオーディオスピーカーやカーオーディオ、PCのスピーカーでもチェックするが、同じように「部屋鳴り」も重要だと思っている。音場がしっかりチューニングされたいいスタジオで聞こえがよくてもリスナーは普通の部屋で聞く訳だから。そういう意味で部屋のソファで寝転がって気持ちのいい音になっているかどうかすごく気にした。それはどの曲も同じだが、カバー3曲に関しては自分でTDしているので特に。
 サーカスが歌うMr.サマータイムがすごく好きだったので、どうカバーするべきか‥‥、考えるまでもなくこのアレンジに落ち着いた(笑)。カバーの中で最初に出来上がった曲でもある。
 オリジナルでは男性コーラスがメインボーカルを引き立てているが、あえてそれを外し、オリジナルのイメージから遠ざけたbossaricaならではのMr.サマータイムを表現してみたかった。エレクトリックピアノのアプローチやシンセリードのオリジナルメロディラインは、白鷹節(?)をしっかり出すために何パターンも考えた後、一番しっくりくるものを選んだ。カバーだからこそアレンジで新しいメロディフレーズを作り、新鮮な気持ちでリスナーに聞かせたいという思いがあった。だからリフやアルペジオのフレージングにもすごくこだわってみた。
 トラックを最初から4つ打ちにしなかったのには理由がある。各小節の一拍目にKickが入った後、バツカーダがしっかり聞こえてくる。これを聞かせたくてここはキックを抜いた。最初はキックがいない代わりにスルドを入れていたが、なんとも言えないマヌケな感じが曲の世界感を壊しかけていたのでやめて、ここは潔くちゃんと抜いてそのかわり最後のサビあたりからしっかり4つ打ちになってスピード感を増して終わっていく。
 普通ではありえない高音域で聞こえてくるギターのカッティングは、カバキーニョというブラジルのギターだ。普段からバンジョーやカバキーニョをプレイするギタリストのひろしさん(ヴェルメーリョ・イ・ブランコというサンバエスコーラのメンバー)にお願いしていろんなアプローチを試した結果これに落ち着いた。
 この曲のように同じメロディを繰り返す構成の場合は、いかに飽きさせないストーリーをアレンジで作るかが面白みのひとつだ。

A Perfect Sky
 カバーをする上で僕が一番意識することは、その曲を自分なりに表現したい!と思える何かがあるかどうかだ。
それがカバーする理由でないとおかしいと僕は思う。
 世間がカバーブームだから自分もそうしたとか、誰かに頼まれたわけじゃなくて、カバーに精通したボサノバをやっているbossaricaは当然カバーにも力を入れたユニットであるべきと、このユニットの企画段階で考えていた。だからこそのカバー収録アルバムである。
 そして絶対に自分が納得いくものを作る必要があった。おまけ的な "カバー曲収録" では意味がなかった。絶対にこの曲を違う世界へと誘ってやる!と意気込んで制作に取りかかった。
 あらためてBONNIE PINKのオリジナルを聞いたときに、すぐにピアノと歌だけの世界が見えた。だからラフスケッチ段階では、ボサノバビートとピアノ、歌だけだった。
 頭の中で、オリジナルを歌だけにした時にそこに鳴り始めたのが、ピアノのアルペジオ。ノートに書いていた楽譜のスケッチとは全く違う。でも降りてきたものには従う主義なので、頭の中で鳴り続ける音を拾って実際にピアノで弾いてみた。悪くない。が、何か物足りない。なんだろう。と何度も頭の中のA Perfect Skyに耳をすます。
 それは「疾走感」だということがわかった。ゆったりとしたビートなのにどこか風を感じる。上空を走るジェット気流のようなものと、ゆったりとした雲とのコントラストが欲しかった。それがIntroを経て平歌のボッサビートに入ったときに違和感なく気持ちよく融合する。フレーズは同じだけどピアノの音の走らせ方、鍵盤の踊らせ方といったニュアンスが今の自分の演奏に出ていない。何度も弾いて録っては聞き返す。
 繰り返していくうちにbefore daylightの時と同じような感覚になる。理屈じゃない演奏で特にIntroの頭はクリックを出さず、フリーテンポで演奏した。間奏のアコーディオンも実は何も考えずに指を滑らせた結果だ。フレーズというより雰囲気を大切にした。Okikaも何も意識せずに感情のまま歌ったし、コーラスアレンジも僕とOkikaが自分のイメージを正直にぶつけた結果出来上がった。
 こんなA Perfect Skyも悪くないだろっ?♪ と軽く友達に聞かせてみる。そんな遊び心というかゆとりがカバーには大切だということも今回の制作で気づかせてくれた。


 ほかの2曲もそうだが、カバーするときすごく歌詞を重視する。もちろんbossaricaオリジナル曲のアレンジもそうなのだが、歌詞を無視したアレンジはありえないし、歌詞を理解しないとアレンジが見えてこない。トレンドを押さえたアレンジのセオリーみたいなものに乗っ取ってストイックに作っていくのではなく「見えてくる」まで歌詞を理解する。
 曲はメロディのチェックやコードチェック以外ほとんど聞かない。歌詞の中に隠されたキーワードを見つけては書き出してそれを音にする。この曲のオリジナルは正直すごいと思った。ほんとに歌詞を理解してアレンジされてる気がしたから。元々がすごくいい曲で、かつ世界観を捉えてて、これ以上に魅力的な演出はあるのかなぁとちょっと迷った。どうしたろーかな・・・。そんな感じだ。
 とりあえず見えてるものを先に組んでいった。そこから何かがまた見えてくるかもしれないと思って。そうして最初にとりかかったのがエレクトリックピアノ(以下エレピ)。
 エレピのリフ混じりのリズミックな伴奏を中心にベーシックトラックを作った後、ガットギターを弾いてくれたひろしさんのギターリフがすごく雰囲気にあっていてそこからどんどんイメージが膨らんでいった曲。エレピとの絡み方がすごく気に入っている。
 サンバビートとニュージャックスウィングのようなドラムビートとの融合は、すごく好きでよくやる。オリジナルではそれを披露できなかったのだが、たまたま虹ではメロディとの相性もよかったので挑戦してみたらすごくはまった。
 オリジナルは福山雅治さん(男性)なので、Okikaが歌うことでまた違った世界の『虹』を楽しむことができると思う。
Live
8/12(金) ラ チッタデラ(川崎)中央広場 >>CITTA'の夏祭り (3 piece club set)
8/13(土) SUMMER SONIC 2011
>>River Side Garden 17:00〜 (full band +)
8/21(日) 長野県・北信州戸狩温泉スキー場 とんだいらゲレンデ >>飯山さわごさ「2011夏祭り」(3 piece club set)
9/22(木・祝前日) 谷津 el corazon
>> Chiba Cafe live tour #2 (4 piece acoustic set)
9/24(土) 津田沼 Sweet Kava Kava
>> Chiba Cafe live tour #3 (4 piece acoustic set)

Discography
Sunrise
Private Beach Records 第一弾!
01. before daylight
02. Sunrise
03. Neon Sign*
04. Squall
05.大好きでもさよなら
06. Stray Cat
07. Re:
08.スキだと言わせて
09. In my life
10. How deep is your love?

Produced by Hideki Shirataka

- bonus tracks -
11. Mr. サマータイム (サーカス カバー)
12. A Perfect Sky (BONNIE PINKカバー)
13. 虹 (福山雅治カバー)
14. Neon Sign  ̄DJ OKAWARI remix
15. Squall  ̄ Turbo’s Circuit Mix